作品タイトル『天狗の子 とある女中の秘録』 短編小説(R-18) 2023年11月20日公開
あらすじ 物語の舞台は大正時代。田舎の郷村にて。旦那様のもとで働く女中・和子は、ある夜、跡取り息子の坊ちゃんを連れてお祭りへ出かけることに。そこで目撃したのは、古くから伝わる忌まわしき風習だった。
作品タイトル『バチェラーパーティー 独身最後の夜』 短編小説(BL) 2024年1月5日公開
あらすじ もうすぐ婚約者との結婚式を控えたある日。高校時代の親友から電話がかかってくる。彼は、結婚前夜に独身最後の思い出を作るため、昔なじみの仲間を誘ってバチェラーパーティーを計画していた。
年明けの正月に結婚式を控えたある日のことだ。 高校時代の親友である文也から電話がかかってきた。
「俺のところにも届いたよ。結婚式の招待状」
回りくどい挨拶は抜きにして、さっそく出席の可否をたずねてみると、どうやら彼は今、アメリカのロサンゼルスに住んでいるらしい。 日本とは半日くらい時差があり、彼なりに遠慮してか休日の朝から連絡をよこしてきた。向こうはまだ週末の深夜だった。
「本当にすまないが、どうしても都合がつかなくてな。しばらく日本に帰れそうにない」 「いやいや、いいんだ。気にしないでくれ。仕事のほうは順調か?」
新居のキッチンでコーヒーを淹れている私の隣には、すでに入籍だけ済ませている妻の咲希がいた。 これから夫婦として一緒に暮らすために、引っ越しの荷物を開けている最中だった。
「それにしても、まさかおまえが結婚なんてな」 とうとう先を越されちまったか――と文也は冗談めかして言った。
「一体それはどういう意味だ?」 私は調子を合わせて軽口を叩く。――ねえねえ、誰なの? と電話口で聞き耳を立てている咲希を鬱陶しがりながら。
「かくいう俺だって、おまえの結婚を祝ってやりたい気持ちは山々なんだが……」 「だから気にするなって。大きな声じゃ言えないけど、僕だって本当はめんどくさいと思っているくらいだ」
いよいよへそを曲げた妻が離れていったところで、私は皮肉まじりに本音をこぼす。
「じつはもう何人かに声をかけてあるんだが、もしよかったら、久しぶりにみんなで集まってバチェラーパーティーを開催しないか?」
「バチェラーパーティーだって?」
「もしかして知らないのか? 結婚前夜に男同士で飲み交わして、独身最後の思い出を作るんだ」
「それはまあ、聞いたことくらいはあるけど」
「いずれ子供が生まれて父親になったら、昔みたいに自由に遊べなくなるだろ? だから、今のうちにやり残したことを済ませておくのさ」
念のため妻にも相談しなければ、と断って一旦電話を切ったあと。 先ほど文也から聞かされた計画の内容をそのまま包み隠さず伝えると、