神林部長を連れて自宅に辿り着いたころ、時刻はすでに22時を過ぎていた。 最寄りの駅から徒歩で10分程度。オートロックを完備したキッチンとユニットバス付きのワンルームだ。 「そろそろお邪魔してもいいかな?」 靴を履いたまま玄関で待たされていた神林部長は、買い物袋の置き場所に困って所在なさげに呼びかける。 「はい、どうぞ。引っ越したばかりで何もありませんが」 大急ぎで散らかった部屋を片づけた私は、しきりにリモコンを取ってエアコンの温度設定を調節する。 とりあえずボタンひとつでお風呂を沸かし、冷蔵庫を開けてみる。恥ずかしながら、炊飯器はほぼ使っておらず電子レンジばかり。 座れる場所を探して部屋の中をうろついた神林部長は、おもむろに窓のカーテンを開けてベランダを覗き見る。 いやいや、物件の内覧じゃないんだから。わざわざ物干し台やゴミ捨て場までチェックしなくても。 「伊原君」 神林部長は、左手の薬指から結婚指輪を抜いてポケットにしまう。 そして何の前触れもなく、いきなり肩をつかんでキスを迫ってくる。 勢いあまって足の先を踏まれた。ちょうどエアコンの暖かい風が当たる角度だった。 あまりにも急すぎる展開に、私は思わず息を止めて身をすくめる。 「先にシャワーを浴びてきてもいいですか?」 「ああ、すまない。俺としたことが、つい……」 それとなくブラウスのボタンに指をかけられた私は、手のひらでやんわりと遮りつつ、くっついた唇を引き離す。 神林部長は、はっと我に返ったように顔をそむける。不自然に盛り上がった股間のふくらみに、目をやらずにはいられない。
「一緒に入ってもいいかな?」 シャワーを出しっ放しにしたまま、シャンプーで頭を洗っている最中のことだった。 後ろから声をかけられて振り向くと、バスルームの曇りガラス越しに、ぼんやりとした人影が現れる。 コンタクトレンズを外しているので、はっきりと姿形までは見えなかった。 手探りで蛇口をひねってシャワーを止めるつもりが、間違って冷たい水を出してしまう。 「脱いだものは、かごの中に放り込んでおいてください」 左右の腕で上と下を隠した私は、あたふたと慌てふためいてその場しのぎに時間稼ぎをする。 「綺麗だね」 ドアノブをひねってお風呂場に入ってきた神林部長は、肩越しに耳元でささやく。 「寒くないか?」 私は、背中を向けたまま黙ってうなずく。 ビジネススーツの上からでも何となく察せられたが、神林部長の体つきは、思いのほか筋肉質で引き締まっていた。 きっと普段から怠けずに鍛えているのだろう。男性特有のごつごつとした感じが、肌で伝わってくる。 「もう少し、くっついてもいいかな」 有無を言わさずなかば無理やり奥のほうへ押し込まれた格好だった。 ワンルームに備え付けられたユニットバスはかなり窮屈で、後ろ手でドアを閉めることさえままならない。 「もう我慢できないんだ。手伝ってくれないか?」 神林部長はそう言うと、中身がなくなりかけたボディーソープのポンプを何度も押して、私の身体になすりつけてくる。 その優しく肌をいたわるような触り方がいやらしくて、私はついつい身をよじってしまう。 「……もう、部長ったら」 私の太もものあいだに挟まってこすられた部長のあそこは、すでに皮を剥いて逆立ちしていた。 私自身の濡れ具合も相まって、今にもすんなりと入ってしまいそうだったので、手を使ってなだめる。 それにともなって、私の胸を揉みしだく部長の手つきも、ますます激しくなる。 指と指のあいだで乳首を挟まれて、不覚にも声が漏れる。 お互いに不自然な姿勢になりながらも、口づけを交わして舌を絡める。 「あっ……!」 危ないと気づいてとっさに手を放したものの、部長はこらえきれず漏らしてしまった。 中途半端なところで寸止めされたものが、どくん、どくんと脈を打ち、あらぬ方向へ勢いよく飛び散った。 「……ごめん、油断してしまった」 きちんと最後まで出してあげようと思い、しょんぼりとうな垂れてしまった部長の下半身にふたたび手を添える。 けれども、たった今射精ばかりで敏感になっているのか、部長はたちまち及び腰になった。歯を食いしばってどうにかこうにか踏みとどまる。 「ずいぶんと溜まっていたんですね」 一体どれだけ出たのか、手のひらですくって確かめようとするものの、泡ごと綺麗さっぱり洗い流されてしまう。 私は今さらと思いつつも、小さくしぼんでしまった部長のペニスを口の中に含んだ。 包んだ皮を縮めたり伸ばしたりして、わずかににじみ出てきた先っぽの汁をすする。
神林部長は、首にタオルをかけて頭を拭きながらお風呂から出てきた。缶ビールのプルタブを起こし、ごくごくと喉を鳴らす。 そうして、飲みかけのビールをこっちへ寄越しつつ、さっそくベッドに乗り込んでくる。 スマホの充電ケーブルを探して枕元に置いた私は、一応までに下着をつけていた。布団を引っかぶり、ヘッドライトの明かりを小さくする。 収納スペースを兼ねた安物のシングルベッドだ。上から覆いかぶさるにのしかかられると、ぎぎっときしんだ音を立てて沈み込む。 「いいよね?」 「うん」 神林部長は、唇の先で突っつくようにキスをしながら、手探りで私の素肌をなで回した。 首すじから胸乳へ、脇腹から腰回りへと、ねっとりとした舌触りが這ってくる。私はただ、されるがままに身をゆだねる。 「本当にいいのか?」 指先でそっと割れ目をなぞった部長が、何を思ったのか、わざわざ狭いところに顔を突っ込んでくる。 まだ下着をはいたままなのに、その上からぐりぐりと鼻を押しつけてくる。 「いやっ、そんなの……」 首を起こして手を伸ばしたものの届かず、弓なりに背中を反らした私は、恥ずかしさのあまり枕を振り回す。 シーツがびっしょりと濡れてしまうくらい、私のあそこはぐちゃぐちゃにされた。 「どっちなんだ?」 よだれまみれの口をぬぐって舌なめずりをした部長が、自分の逸物を握ったまま這い寄ってくる。 「……早くしてください」 私は、枕元を探してコンドームをたぐり寄せると、上目遣いでお願いする。 じつは、帰りにコンビニへ立ち寄った際に、こっそり忍ばせておいたのだ。 「入れてもいいんだな?」 早くも汗ばんで毛布を払いのけた部長は、私の太ももをぐっと持ち上げて、無理やり入り口を押し広げる。 仰向けのまま逆さまにひっくり返された私は、唇を噛みつつ背中に爪を立てて引っかく。 お腹に力を込めて息んだかと思いきや、一度も引き返すことなく、ずんずんと奥まで入ってくる。 「ごめん、痛かったか?」 「ううん、大丈夫」 心配そうに私の表情を覗き込んだ部長は、途中で止まったまま動かなかった。 とはいえ、今さら引っこ抜くのも無理だった。 このままでも十分に気持ちよかったが、私はもっと近くまで来てほしかった。 だから、部長の脇に腕を回してゆっくりと抱き寄せる。 何度か出し入れしているうちに、少しずつ馴染んでくる。まるで鉄パイプみたいに硬かった。 曲がらぬもので中身をほじくられるたび、どんどん漏水してくるのが自分でもわかる。 「ちょっときついな。力を抜いて、リラックスして」 「でも、こんな格好じゃ……」 先ほど一緒にシャワーを浴びた時もそうだったが、どうやら神林部長は、後ろから抱きつくのが好きなようだ。 枕を横取りするなりベッドの隣に寝そべり、私の片足を抱えて開脚を強いてくる。 ――ほら、自分で触ってごらん。 部長はそう言って私の手首をつかみ、今まさに挿入しているところへ持っていく。 行為の最中にもかかわらず、自慰をさせながらほくそ笑む部長の変態っぷりに、私はいささか困惑してしまう。 「もう駄目だ……。そんなに締めつけられたら……」 息せき切らし汗だくになりながら腰を動かしていた部長は、またしてもすんでのところで発射をためらった。 なんで途中でやめちゃうの? 我を忘れて感じていた私は、悔しくなって横目で睨みつける。
「――交代します?」 汗をかいて少し喉が乾いたのだろう。神林部長は、枕元に肘を立てつつ、頭越しに飲みかけのビールを欲しがる。 どうやら、すっかり油断しているようだ。私は布団をまとったまま身をひるがえして襲いかかる。 「そろそろお疲れでしょう? 今度は私が上に乗りますから、部長は休んでいてくださいな」 私は、神林部長の分厚い胸板に手をついて、そのままベッドに押し倒した。みずから股を広げて体位を入れ替える。 図らずも抜けてしまったペニスの根本をつかみ、ゆっくりと腰を下ろして深くまでくわえ込む。 「待ってくれ、伊原君。言っておくが、俺はまだまだ……」 「奈穂って呼んでください。今だけは」 神林部長は、じたばたとあがいて抵抗の意志を見せる。 それでも私は、耳の後ろに髪をかけながら口づけをせがむ。さらにお尻に体重をかけて、身動きできないようにする。 眉間にしわを寄せて苦しげにうめいた部長の口から、かすかにくっと本音が漏れる。 勝手に腰を動かし始めてしまえば、もはや何も言えまい。 「部長って、こういうのがお好きなんでしょう?」 神林部長は、おでこで両腕を交差させて自分の顔を覆った。 けれど、表情を隠していてもわかる。だって、さっきまでとは全然違うんだもの。 「知ってますよ、私。さっきから部長が、何度もイキそうになってるの」 部長の肩を押さえつけて馬乗りになった私は、窮屈に背中を丸めて舌先を伸ばす。 片方ずつ交互に乳首を舐められた部長は、まるで活きのいい魚みたいにベッドの上で飛び跳ねる。 「ほら、部長もわかります? 今ちょうど、気持ちいいところに当たってるの」 部長が力づくで起き上がって体勢を変えようとするので、私は両腕で突き放して後ろざまにのけ反った。 すると、長くてよくしなる竿の先が、私のおへそのくぼみで引っかかる。 ベッドに倒れたまま激しくのたうち回った部長が、たまらず膝を叩いて降参する。 「君はまだ届かないのか……? もう我慢の限界だ……」 「いつでも来ていいんですよ? このまま、全部出しちゃってください」 私は、今にも尽き果ててしまいそうな部長の様子に焦りを覚え、自分も間に合うように急いで追いかける。 なりふり構わず髪を振り乱して必死になるうちに、全身から噴き出した汗がぽたぽたとしたたり落ちてくる。 さらに私は、部長の両腕をつかんで自分の胸を触らせた。ちぎれんばかりにみずから片乳を差し出して舐めさせる。 息が詰まるくらい強く抱きすくめられた瞬間に、私の膣もぎゅっと縮んで狭くなる。 「ああっ、イキそうだ……! 搾り取られる……!」 私よりも先に音を上げたはずの部長が、存外にもかなり持ちこたえたので、私はなすすべもなく崩れ落ちてしまった。 いよいよ最後まで昇りつめた部長は、そうとも知らずに下から突き上げて、とどめを刺すように追い打ちをかける。 私のお尻を両手でわしづかみ、一番深いところで絶頂に達する。 「……まだ続いてます?」 なかなか自分から射精してくれない神林部長のセックスは、本当にいつ終わるのかと思えるくらい激しかった。 もうすべて出しきったはずなのに、まだ少しだけ動いている。 ようやくお互いの呼吸が落ち着いたあと、軟らかくなったペニスをゆっくりと引き抜こうとすると、 「すごいよ、奈穂……。こんなの初めてだ……」 神林部長は、まるで死んだようにぐったりと倒れ込んでいた。 余韻に浸ってうわ言をつぶやきながらも、私のことを逃がすまいと片腕で抱き寄せてくる。 私は、ゴムの先っぽに溜まったものを逆さまに縛り、あらためて成果を確かめる。 どうやら、ものすごく濃いものが出たようだ。 「――どうだった?」 枕にしていた腕がしびれたのか、おもむろに頬杖をついて横向きになった神林部長が、私の頬をなでながらたずねてくる。 本当は部長よりも先に追い詰められてしまったけれども、気づいていないのにわざわざ自分から白状するのも何だったので、私はあえて黙っておくことにした。
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